こんにちは。
ゼロイチエステート、代表の坂本徹です。
前回のコラムでは、
事業に必要な三要素であるヒト・モノ・カネのうち、モノ(物件)に焦点を当てて書きました。
今回はお金です。
飲食店の事業開始に必要となる初期投資は、どのくらい必要となるかについて考えてみましょう。
飲食店開業にかかる費用項目
大前提として、飲食店を開業するなら、以下の要素をよくよく検討されると思います。
・都心の一等地で出店するのか
・郊外なのか
・居抜きを活用するのか
・スケルトンなのか
上記の選択次第で必要となる開業資金も大きく変わってくることでしょう。
本コラムでは店舗を契約する際に必要となる費用について述べたいと思います。
まず、ざっと賃貸借契約時に金銭授受が発生する項目を列挙してみます。
・前家賃(概ね賃料の1ヶ月分、月の途中から入居する場合は日割賃料)
・保証金又は敷金
・礼金
・仲介手数料
・造作譲渡代
・火災保険付借家人賠償保険
・保証会社への加入費用
※その他管理費(共益費)や看板使用料等が定められている場合、前家賃と共に支払う場合有り
以下、各項目について簡単に説明しましょう。
【前家賃】
前家賃はその名の通り、1ヶ月(又は使用日数)分の物件使用料です。
不動産会社から示された募集図面に記載された賃料、または申込時に提示される賃料で契約されることでしょう。月の途中から入居する場合は日割分が請求されます。
【保証金又は敷金】
保証金又は敷金と呼ばれるものは、契約時に大家さんへ預けておくお金です。
首都圏(店舗の場合)ならば、概ね家賃の6〜12ヶ月分が相場です。未払い家賃が発生した時の補填や何らかの事情で店子が飛んでしまったときの原状回復費への充当といった形で担保としての機能を持ちます。退去時に全額却ってくるのが原則です。
しかし、募集要項の欄に(保証金又は敷金)償却が規定されていることが多いです。
これは解約(退去)時や、もしくは一定の期間ごとに保証金又は敷金から一定額を差っ引いて返却しますね、という契約項目です。賃料の2ヶ月分くらいだったり、保証金または敷金の20~30%が相場とされています。これは言わば遅効性の手数料と捉えてください。本来、預けた保証金ないし敷金は全額が返還されるのが原則ですが、償却という項目が入ることによりその分の返還義務を大家さんは免れます。
【礼金】
礼金は表向き大家さんへ支払う手数料として授受される金銭です。概ね家賃の1~2ヶ月分が相場です。表向きと書きましたが、実際には大家さんから仲介した不動産会社へ謝礼として支払われる金銭の原資になるケースもあるようです。「バック」と呼ばれる金銭ですね。少しでも契約金を抑えたいというとき最も交渉余地があるのはこの礼金かも知れません。礼金が全くない物件もあります。
【仲介手数料】
仲介手数料は、大家さんとの間に入って契約をまとめた不動産会社へ支払う成功報酬です。大家側でも仲介に関する対応を不動産会社を立てるケースが多いため、実質大家側の不動産会社と折衝し話をまとめたことへの対価と呼べるかも知れません。通常、契約金の支払いと同時に家賃の1ヶ月分を支払います。
【造作譲渡】
造作譲渡代とは居抜き店舗を賃借する際に、前テナントから造作を譲り受ける対価として支払われる金銭です。この金銭の授受に大家が介在するケースは稀で、契約当事者はあくまで前テナント(売主)となります。概ね100〜600万円前後でまとまるケースが多いようです。金額の算定方法は特段なく、売主の言い値というのが実態です。故にオープンから1年未満の店の譲渡金額が50万円で営業30年超の店の譲渡金額が500万円というのは十分あり得ます。機器や設備の新旧、実態価値の高低は関係ありません。
【火災保険付借家人賠償保険】
店舗へ入居する際、火災保険付借家人賠償保険への加入は必須です。おそらく賃貸借契約書中に加入必須、付保証明が届いたら提出してね、という文言が入るハズです。隣接テナントからの出火が原因で延焼してしまった、または故意なく階下のテナントへ漏水被害を与えてしまった等のトラブルをカバーする保険です。店舗面積や特約加入の有無等で金額が上下しますが、10〜20坪くらいの店舗で月々2,000円前後が相場のようです。
【保証会社への加入費用】
保証会社への加入必須という物件が増えているようです。家賃の滞納等があった場合に、大家への支払いを保証会社が立て替えてくれるサービスです。この保証会社へ加入する際に賃料1ヶ月分程度の費用が発生します。数年ごとに更新名目で家賃の何%かの支払いも必要となります。保証会社によって費用は異なりますので事前にヒアリングされるといいでしょう。
まとめ
上記項目を積み上げた金額が賃貸借契約時に必要となる費用です。
不動産会社にお願いすると早い段階で見積りを用意してくれることでしょう。
開業費の相場について、日本金融政策公庫から実態調査の結果が出ています。
それによると、コロナ禍以降の21年度における飲食店開業費の平均は941万円と調査開始以来の最安値だったそうです。
大箱と呼ばれる広い面積の店舗のニーズが減ったことに加えて、事業環境を考慮し賃料交渉などが比較的通りやすいといった事情も背景にあるのかも知れません。
因みに、開業時の資金調達額は平均1,177万円でこれも最安値だそう。
また、造作譲渡に関しては店舗仲介の中でも特殊な取引形態となるので、やったことがないという不動産会社も珍しくありません。
ですが、店舗探しに精通している不動産会社であれば契約書の作成から引渡しに至るまで適切なサポートを受けることが可能です。同じ金額を払うのであれば、しっかりしたノウハウを持つ経験豊富な不動産会社を選びましょう。